ものの時代から体験の時代へ

今回の日本行きがキャンセルになり、色々な日本での予定もキャンセルせざるをえない状況になり、3月25日に予定していたRobe Japonicaさんとのトークイベントを予約していただいていた皆様にもご迷惑をかける形となってしまって申し訳ありませんでした。

皆さまにお会いできるのを本当に楽しみにしていただけに悔しさが残りますが、いつかまたリベンジを果たしたいと思います。

個人的に楽しみにしていた日本でやりたかったことも沢山ありました。

1つは喫茶店。昔ながらの喫茶店が大好きで(カフェでないよ喫茶店だよ)ちょっと路地裏に入って外回りのサラリーマンがランチを食べに入ってくるような地元密着型喫茶店でコーヒーを飲みながら日替わりランチを食べてゆっくりとした時の流れを過ごすと「あー日本に帰って来たぁ」という気分になります。

後2つ目は、雑草フェチなので実家の近所の裏山をウロウロ歩いて春に顔を出す雑草の新芽を見ながら歩いてその空気に触れるのも至福の時です。

メルボルンもかなり便利になり、ダイソーもユニクロも無印良品もラーメン屋さんも、日本食材屋も近所のショッピングモールにあります。ネットショッピングで色々買えるしとにかくそれほど「日本に帰ったらこれ欲しい」というものはなくなりました。

しかし喫茶店でコーヒーを飲みながらママとサラリーマンの会話と流れるラジオを聞きながら過ごすゆっくりとした時間や、木漏れ日の中をツクシやフキノトウやどくだみの新芽を見つけながら歩く時間、その「体験」というものはその場所に行かないと得られないもの。

そうこれからの時代 溢れる商品たちにちょっと飽きが来た人々が喜びを感じられるもの、それは「時」と「体験」だと思うんです。

それは着物にも言えると思います。

着物は確かに洋服よりも着る時間がかかります。

準備にも時間がかかります。慣れて来ても着付けは10分から20分くらいかかります。洋服を着る時間と比べたら数倍です。選ぶのにも時間がかかります。でもその時間を「価値のある体験の時間」という視点で見てみたらどうでしょう?1つ1つを重ねる「時間」季節やイベントやこれから会う人などを考えながら選ぶ小物たち。

全ては貴重な体験の時間だとすれば、その時間は急ぐことはない。着慣れないうちは時間がかかって焦ってしまうかもしれませんが、着付けが慣れた頃、その「時間」は大切な「嬉しさを重ねる時間」になります。

それには何回も着て慣れる事です。「着物を着られるようになった」から「着物に着替える普段の時間」になるまで是非皆さん着て着て着まくってください。