女の黒紋付

着物を販売するようになってから、在庫整理も私の仕事となりました。

大量に日本からやって来た着物たちを全てコンディションを確認したり、カテゴリー分けしたり、値段をつけたり、作業場で1人黙々と山のような着物や帯と格闘する時間です。

でも一番好きな作業。あぁ、この着物にはこの帯が似合うなーとか行って帯を探し出して当ててみて「やっぱりかわいいわぁ・・」なんてすぐに脱線するので時々仕事してるんだか遊んでるんだかよくわからなくなってくるときがあります。

着物や帯は1つ1つ語りかけてくるので、どんな人が前に着ていたのかなぁ 今度はどんな人が着てくれるのか中なんて想像しながら話し相手になってあげたりします。

女性用の黒紋付がそれはもう沢山入って来ます。

今では「喪服」と呼ばれ、不幸の席に着るだけの着物という間違った認識で縁起悪いと日本では売れずにここにたどり着いた子達が沢山いるのです。ほんとは慶の席にも着られる美しい子達なのに・・。

その証拠とも言うべき古い黒紋付には比翼仕立てで(裏にもう一枚襲られている今では黒留袖などにみられる白のピラピラした布 現代の黒紋付には不幸が重なるとかなんとか言い出して付いてません)身八つ口(脇の空いたところ)ところからはちらりと緋色がのぞいています。

裾のふきにはたっぷりと綿が入り、まだお引きずにで着ていた頃、およそ100年前のものではないかと推定されます。

喪服が黒紋付というイメージになったのは昭和40年頃から、それまではお祝いの席にも着られていたんです。そんな子は「私は不幸の席だけで着られていたわけではないのよ」って話しかけてきているような気がするのです。

でもオーストラリアの方達はそんな間違ったマイナスイメージは全くないので黒紋付大人気です!

素晴らしい縮緬の感触と、黒の中に浮かび上がる白い家紋が「Cool!]」と言って買われて行きます。 ほとんどみなさんHouse Robe(家でくつろぐ時にはおるバスローブみたいなもの)として買われていくので着付けとかも関係ないし背が高い方だと対丈でちょうど足首くらいまでいくのでいいみたい。所変わればスタイリッシュなHouse Robeになっちゃう黒紋付の物語でした。